回復論 兆し殺し/ただのみきや
 
女の背に乗って
老女の背にまたがって
着のみ着のまま咬んだ耳きみの
うず巻き管に潮満ちるころ
膝折り指つめ祈る影の群れ
初穂は踊っている
ホトトギスの鳴く墓の傍

まつ毛の森の迷い蛍
閃光で網膜を焼き
未来を切り裂いた
少年の財布の中に隠されたまま
干からびた避妊具 五月の亡霊

墓墓母の墓
寂滅の甘噛みに
捲れる空 見たか
見えたか 下着の色は 
彼女は猛禽の目でガラスを溶かし
溜息からビジョンを孵す
剃刀を嗅いでいるきみの
ノートに新しいポーズの死体が放置される
ヌードで笑う
甘いシャドー 雨に犯される耳

まみえるもの
みまかるもの
めぶくみどりに目を抜かれ
時代遅れに首絞められて
ぼくらは馬をむさぼり喰う
まっとうに狂う
至極 ちょんまげぜんとして
喰らい嫌い狂う
背骨の溶けるまで
ああ骨董──恥をさらして本音を断つ


                    (2025年5月11日)









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