音遊び日記/鏡文志
く
待っている間もなく、次の扉は常に開かれている
突然の出来事と、一瞬で吹き飛ぶ破片
風は激しく、命は縮みながら、それでも生きている
心をひた隠しにし、黒づくめに身を包まれた男の背中で鳴る音
それは『ドン』
車内で父の悪口を言ったことを、後でまずかったかなと思う
もう、忘れよう 忘れようと言われ自分でそう思っても発作的に怒りが立ち上ってしまう
女にとって、性欲は吐口であるそうだ
私は、長男のフラストレーションの捌け口にされ続け
その長男が放火事件の罪で逮捕されても、その被害届は誰一人にも受理されない
私もまた別の吐口を探し、見つけることでしかこの苦しみから解放されないのだ
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