昭和64年をまたいだ後に/北村 守通
 

 過ごすことが出来た
 僕らに
 チャイムは鳴らなかった
 
 そして
 再び
 
 見えない誰かに
 背中を押されて
 見えない何かに
 蹴っ飛ばされて
 漫画喫茶を出て
 まぶしい日差しの下を
 歩くようになっていた
 そんな
 日々の
 ブラウン管の
 向こう側が
 今
 教科書の中で
 ほんの
 少し
 ほんの
 数行の厚さで
 解説される
 私たちは
 数行でしかなかったが
 こどもたちには
 蛍光ペンでマークすらされない
 数行でしかなかったが
 数行を
 占めることができるくらいの
 質量を持って
 生きてきたということだった

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