四月終わりのメモ/由比良 倖
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もうすぐ四月が終わる。一ヶ月間、本当に鬱々していた。今も、見えるもの全てが眠たそうにとろんとしている。僕の視線は何もかもを仮死状態にしてしまう。ヘッドホンを付けて、空をぼんやり眺めている。中国の、何と言うのだろう、水色の青磁(?)みたいに平坦な空。初夏と言ってもいい天気だ。空の向こうでは、きっと星がきらめいているのだろう。でも僕には何も見えない。雲はもう、少しも雪を抱えていない。雨も降らない。空はぽっかりと、純粋な楽園みたいに遠くの方で閉じている。
個人的な存在でいたい。いつも、本来のあり方としての個人性を、脳という宇宙全体で感じていたい。僕たちはみんな、ひとりひとりが宇宙の果てから
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