チューリップで乾杯を/まーつん
 
と刺して、我に返らせる

 その陽射しは
 知恵の樽で熟成された
 美酒に等しく
 その樽とは、この星そのもの

 酔いしれる花が、光を零さないように
 妖精たちが、その茎を支えて
 微かに揺らすことで
 甘い蜜を、攪拌していく


 
 誰かの訪れを
 待っている

 丘の上にある
 この忘れられた庭園で

 東屋のそばにある、ブランコは動かず
 鎖には蔦が絡まり、錆付いたまま

 やがて
 庭園の中心に建つ日時計の
 針が歩みを止める時
 
 宵の帳の向こうから
 近づいてくる、永遠の足音が

 風がひと吹き、花を揺らして
 隣の花にカチリと当てた

 乾杯、と囁く
 沢山の声があり
 
 そして

 辺りに群生する
 チューリップの花唇から
 光が一斉に退いていく
 
 グラスの寝酒が
 干されるように

 星を離れて帰還する
 誰かの喉に落ちていく

 次の目覚めと共に
 忘れられる定めの
 


 美しき光が

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