チューリップで乾杯を/まーつん
と刺して、我に返らせる
その陽射しは
知恵の樽で熟成された
美酒に等しく
その樽とは、この星そのもの
酔いしれる花が、光を零さないように
妖精たちが、その茎を支えて
微かに揺らすことで
甘い蜜を、攪拌していく
四
誰かの訪れを
待っている
丘の上にある
この忘れられた庭園で
東屋のそばにある、ブランコは動かず
鎖には蔦が絡まり、錆付いたまま
やがて
庭園の中心に建つ日時計の
針が歩みを止める時
宵の帳の向こうから
近づいてくる、永遠の足音が
風がひと吹き、花を揺らして
隣の花にカチリと当てた
乾杯、と囁く
沢山の声があり
そして
辺りに群生する
チューリップの花唇から
光が一斉に退いていく
グラスの寝酒が
干されるように
星を離れて帰還する
誰かの喉に落ちていく
次の目覚めと共に
忘れられる定めの
美しき光が
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