肉体と精神を失った日本人/室町 礼
としか言いようがな
いでしょ。村上春樹もそれと同じ。
まともな外れもの、アウトロー、つまり文学青年が
そんな大衆小説を読むわけがない。
では大衆は、わたしたちのような文学オタク、言語
フェチ、物語フリークにはとても読めないワンパタ
のそれら量産小説をなぜ読めるのか。退屈もせず、
コーフンできたか?
それは日本人のみならず世界的に戦後インテリが
〈肉体〉と〈精神〉を失くしたからです。
だから村上春樹の文体は幽霊のように足が地につか
ず、ことばは春の霞のように浮遊する。山手、宇野
ら大衆小説家の更新された新版です。よって大衆化
したインテリもどきに受けるのです。でもわたした
ちが山手樹一郎や宇能鴻一郎をとてもとても読めな
いように、まともな感性をした外れ者の文学青年に
あんな気色の悪い
ワンパタの大衆小説が読めるわけがありません。
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