鏡のなかに/大町綾音
 
「アルファベット」

けむし けむし けむし
小さい 小さい 小さい

けむし

のびるけむし
ちぢむけむし

けむしのダンス


「おとしまえ」

おとしものは、
おとしまえ

あたりまえのものを
ふとおもいだしたら、

朝、
初めての電車にのっている気分


「はなはちる」

はながちるときってね
だれかをすくっているんですって
びょうとうにいる男の子がいった

さくらはすでに葉桜になっていた
いっぽんだけ花のある木がのこって
のこりはすっかりちっていた

さびしくもないけれど
さびしくないことがさびしい
そんなこうけいがつづく街だった

やさいをつくりたいんです
かれはいった やさいおいしいよね
わたしはいった

かがみのなかにおくりものがあった
かれはことばをさがしていた
わたしはことばをさがしていた

さびしくなんてないけれど
さびしくないことがさびしい
そんな街にすんでいた
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