履き違いの美/栗栖真理亜
 
人々があれほど畏れ敬う?美意識?とは何か
時々考える事がある
美について語る時対象はもちろん人ではなく
建造物や芸術品など?モノ?を指すべきなのだろう

しかし、時に人はカリスマを身に纏った憧れの人物に
?美しい?だとか
?麗しい?だとか
嘆息混じりに呟く事がある
言葉を発した彼女にとっては自分の目の前に現れた貴人の姿は
とてつもない夢なのかも知れない

ところが彼女の視ている現実こそは儚い幻なのである

彼女の想い描く尊いはずの人物は
もちろん芸術に対する造詣が深い訳ではなく
食うに事欠かない程金回りのいい貪欲なひとりの人間である
商売人という素顔を隠す為に芸術
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