階段/室町 礼
 
わたしには不思議でなりません
でした。
階段はなぜか鉄製でしたがペンキは剥
げ途中で踏み板が脱落している部分も
あって、二階にあがるのはかなりの危
険を覚悟しなければなりませんでした。
ようやく上がってみると驚いたことに
大広間にベルトコンベアのようなもの
が組まれ、油切れなのか、ギアの摩耗
が原因なのか、ガタゴト不規則な音を
立ててベルトの上に缶詰のような製品
が流れていました。その流れに逆らう
ようにキンキラの缶詰は転がって止ま
り、また自動的にもとの位置に収ま
ると再び他の缶詰が転がって抵抗をつ
くりそれをまたコンベアが修正すると
いう繰り返しでした。まだラベルがつ
かない缶詰は陽の光を照り返し天井を
明るく染めていました。
はて、何の缶詰だろうか? 気になっ
てプルを引いてみるとぷしゅ〜とガス
のようなものが噴き出し、あわてて飛
び退くとわたしは「もぉ〜」と声をあ
げていました。なぜかわたしは牛にな
っていたのです。
こんなバカな話があるでしょうか? 
でも実際にあったのです。
戻る   Point(3)