砂の城の考察 #3/まーつん
 
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「゛本当の賢さ゛か」
 皮肉っぽい口調で茶々を入れる声が響いた。振り返ると、黒い長髪の男がスポットライトの下で俯いていた。

「経験が言葉に勝るなら、全ての殺人者は、刑務所に入れられることで、命の尊さに目覚めるだろうか」
私は首をひねった。そして、答えた。

「刑務所は、受刑者に何か本質的なことを教える場所ではない。生きる姿勢や技術は教えられても、同じように生きる他者を尊重する理由を教えてはくれない。静けさの中で内省を促す場所だ」

男は眉を寄せた。

「そうだ…。正義や道徳について、口で言ってきかせても無駄な奴らだからこそ、ムショに入れられるわけだからな。」


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