春の夕立ち/室町 礼
しんと寂しい春の日にむらむらと夕立ち雲がわき起
こるのはなぜなのか。
詩の批評とは詩人が詩を書くときにのみ自らの重力
の垂線にそって吊り下げられる重りのようなものだ。
神にだってひとの詩の批評など出来るものではない。
大根を輪切りするように音楽は切断することができ
ない。桜の葉のひとつひとつを仔細に裏返してもそ
れはただの桜の葉の一枚でしかない。落語家が昔か
ら同じネタを語るのに出来不出来があるのはなぜな
のか。
ずっと出来が悪く寄せの客が沈滞してどうしょうも
ないとき「お清さァん、ちょいと」というひとこと
でその場の空気を変えてしまえることがあるのはな
ぜなのか。猫が障
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