まわるかたち/木立 悟
 



まわるかたち
ほぐすかたち
髪に降り来る
蜘蛛の巣の火
道をわたり
冷めぬうちに
草の根もと
浅い轍
爪の深さ
土に届ける


雨の窓たち
しんとした景
朝をすくい
指をひらくと
小さな鈴
双つの羽
足して三つの
淡い渦たち


光の針
曇にまぎれ
やわらかな粒
こぼれる音
外国の花
目に痛く
多くを歌い
かたちをふちどり
静かに届く
習わしの波


長い間
月にのびて
目ざめたばかりの
海にのびて
生まれたての鉄
雨の煙
甘いかおり
風をほどく
風のような手


踊るための羽
のびやかに
細い腕の先
良く似た午後
文字盤の上
数は合わない
まわるかたち
重なる姿
土に灯る火
絶やさぬ羽


明かりのない
夜の通り
建物の隙間
歩き去る色
曲がり角の朝
置いてきた靴
土と火と草
かがやく足跡
素足の砂粒
空へと伝う
かがやくひとつ
ひとつのかたち






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