情迷/岡部淳太郎
 
情けなくも迷うのか、それとも、情けとともにあえて
迷うのか、とりあえず、抒情とともに迷うということ
にしておこうか。情迷という態度を貫いてみる、人は
常に迷いとともにある存在であり抒情とは人にとって
癒しとなりうるものであるからだ。抒情とともに迷う
こと、抒情を連れて迷うこと、そのなかで生の糧とな
るような貴重なものが得られることもあるかもしれな
い。そして、その迷いの行路のなか、抒情の旋律のな
か、私は陽が輝き鳥が歌うのを見る。そのようにして
世界は、迷いのうちにありながらも貴いものとしてあ
るのを、私は知るのだ。抒情とともに迷う、または、
抒情を引き連れて迷う。そうして雨は涙のために降っ
て、風は弔いのために吹いて、陽は笑まいのためにす
べてを照らすのだ。抒情こそわが友。わが迷いのため
に常に傍らにあり、その道を導いてくれる。抒情は迷
いのために紡がれる。常に抒情とともに積極的に迷え。



(2025年2月)

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