ユニオンの悪夢/室町 礼
 
狂った国土で正気を保つのはむつかしい
猫なで声が
泥で出来た人形たちを踊らせ
盲いた人たちが
拍手喝采する枯野のアンフィテアトルム
野糞を始末するトイレは
すぐに壊れた
だれもが
口からは真空の泡を吹いて
その顔のつやのいいこと
逆立ちして
雪崩のように
頭から突っ込んでいく
わっさい
 わっせい
雷鳴と驟雨の見えない大気の下
歩いていることも
どこへいくかも知らず
ただ わらって列をつくる
人のかたちすら崩れた黒灰色の群れ
いっそ同じ泥になればいいのに
へ泥をかき回す棒と
かきまわされる泥の背がみえて
ああいやだと
意地汚くもがいている
子どものような心が
この白痴の心境の透明さに拘るから
楽になれないのだと
ユニオンの壁の外に立って
ああそうか
こんな終末だったのかと
いつまでも
もがいている

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