海──切断された微分された線の/大町綾音
さまざまに貝殻の散らばる海の──足を思わず切ってしまいそうな──四度の和音によって、微分されていく空、空の空。面ではなくて、線の空が垂直に海に降りてくるところの光を、掌に押しとどめてつかまえなければならない。……ここは、そんな界隈。ガレキの堆積のように、不幸と幸福のうずもれた破片の時空が、それぞれ、人──もの、心──ため息、経験──死のように、いくつかの組になってカンバスのなかにバラまかれる。それは、陰惨な至福の残像。誰かの思い出と、誰かの憧れ。中空に透明な扉を開いたのなら、d音からするすると上がっていく。虹の爆発はすべからく世界を変えていくに違いなく……ト音とへ音の間にいくつもの波があり、それぞれの波は波どうしの重なり合いで、ここにも風が吹く(意外?)──そんなことはない。「そ〜んなことはなあい」と歌いながら、片手を肩の上に載せて、見えない過去の過去のかなたまで歩き出していく少年がひとり。
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