稲妻の記/栗栖真理亜
 
性という光

曇った天の隙間を縫って
大地を舐め尽くす稲光のように
煌めく一閃を与えてやろう

凄まじいほど強烈なプラズマの衝撃で
澱んだ傷みすら焼き尽くせ

やがて雲は流れ
爛れた傷痕から若葉が芽吹く頃
他の生き物達も途切れかけた息を吹き還してゆく

憂鬱な風を跳ね付け
湿り気を帯びた衣を脱ぎ捨てた時
初めてヒトは新たな局面に遭遇するのだ

未知なる道を突き進み
誰も知らない
僕だけの秘境を愉しもう

その場限りの甘い誘惑ですら
今はなんの魅力も感じない

今こそ、雨で濡れそぼった大地を力一杯蹴り上げて
鼻先で笑い飛ばしてしまえ
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