旅程──一つの残余である夕べ/大町綾音
 
るわたし……アイフルはもっと残酷だった。

 帰り道に踏切はなくって、自動車のライトをわたしも点ければ、秒刻みで夕食を待っている両親のことを考える、冬の日。

 もっと温かなもので大切なものをつつんでいれば良かった。そうすれば、こんな飢餓のような苦しみに囚われることもなかったろうに。

 ウミネコのいつか聞いた声が頭の中響いた。切なさの糸だけでつながったそれは、きっと死んだ母がこの夕べに降りたという徴だった。

 わたしはとうに泣けない女になっていたけれど、このときばかりは嗚咽しながら夜を待とうという気になっていたのだった。やはり心の旅。
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