ごちそう/栗栖真理亜
焦茶色の土に塗れ
横たわる聖護院蕪と金時人参
自宅裏手にある井戸で
背筋凍るような水を浴びて
凹凸の肌を露わにする
長い間固い土に埋もれていた彼ら
掘り出されてやっと日の目を見る
さてどうやって食べようか
聖護院蕪は薄く輪切りにして千枚漬けに
あるいは蕪蒸しにしようか
金時人参は蓮根やこんにゃくや鶏肉と一緒に煮込んで
筑前煮に
あるいは正月のお雑煮に入れようか
まな板の上で刻む音
ことこと煮込む音がきこえる
鼻先にかかる白い湯気
出汁と醤油と味醂とお酒の香りに満たされる
我が身が食べられることを
いまかいまかと待ち浴びて
見つめるような眼差しを向ける彼らを
私は舌なめずりしながら見つめ返した
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