悪魔のあいうえお/菊花紫煙
 
血縁を蔑ろにした今までの付き合いゆえに
幾分かの血の遠さの病人に見舞うことはなかれども
さすがは実父の大病で、医者曰く命にトドメさすほどはないと聞いても
万が一はあるもので、伝えねばならない言動に態度にあろうと言うもの
足を急かせて総合病院へまっしぐらに行く道の
こっちが近道だ、人も車も渋滞しない裏道だと
グーグル・マップが俺に囁くのだ
吸いかけの加熱式煙草を抜き取り、放って
細い路地に踏み入って、左右に竹藪生い茂る一本道を行くところ


悪魔が通せんぼ、していた


悪魔は言う 
「この道、通りたいか」
俺は言う 
「当たり前だ、通せ、通せ、貴様のようなものに構
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