蟻/栗栖真理亜
 
してきたばかりで右も左もまだわからぬ新人には手厚い制裁を
出社後お決まりの無視と威嚇と嘲りの三重奏
やられた相手は精神に異常をきたし
働く意思を奪われたあげく出社すらできなくなり
やがて退社を余儀なくされる
因果応報繰り返される歯車に絡まったままいつしか無感覚に陥り
そして私も気づけば歯車さえも抜け落ちて
平日の昼日中に自宅軒下の蟻を見つめている羽目となった

蟻は相変わらず一本の少し曲がりくねった列を作り脇目も振らずに働いている
目を転じた先に白いコンクリート製の地面が日差しで白く浮かび上がり
乾涸びて伸び切った木菟の死骸がこびりついていた
戻る   Point(2)