ある寒い春の日/ホロウ・シカエルボク
 
」僕はきっと驚いた顔をしていたのだろう、彼女は吹き出した、「ねえ、とりあえず私、今日から戻って来てもいいかしら?」もちろん、と僕は言った、彼女はにっこりと笑って、じゃあ荷物まとめて来るわね、と言って出て行った、僕は紅茶の缶を手に取り、初めて見るもののように見つめた、おそらくはこれまでの続きになるだろう、でもそれはきっと、どこかこれまでとは違ったものになるのだろう、という気がした、確かなことなんて何もないけれど、どうせ人生は自己満足なのだ、持って生まれた性分というのはどうしようもないけれど、でも、少し注意深く誰かを見つめることくらいなら僕にだって出来る筈だ。


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