ひるこ/201
ない
そうであればいいと
願ったことがない
望んだつもりもない
今宵誰もが口を閉ざしている
明日死ぬであろうあなたのために
わたしたちは永遠に歌おう
眩し過ぎて目に見えない絵を描こう
小川に手を浸して
来たところと行くところ
どちらでもない今を確かめるために
翼のない背中を撫でて
私は帰るのだろう
そしてまた行くのだろう
束の間の休息に
ただ笑っているあなたの記憶があれば
怖くはないのだ
本当に恐ろしかったものは
いつも目に見えないものだった
すべてあの悪夢の終わり
弦の切れたピアノ
もう弾くことができないと分かっていながら
それは楽器であり
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