幼な髪の君/栗栖真理亜
 
僕の大切なベビーフェイス
無理に笑わそうとして泣かせてしまったんだ
細く柔らかな髪がサラサラと風になびく
漆黒のカーテンが
涙でクシャクシャになった君の横顔(かお)を隠して
僕から遠ざかってゆくよ

こんなにも
こんなにも
愛しい君なのに
僕はふてくされたような振りをして
あらぬ方向に視線を向けた

あぁ、僕の優しい天使
月明かりが眩しいと眼を細め
僕の肩にもたれかかったアノ頃
そのまま何も言わずに連れ去ってしまえば良かった

灰色の空は僕の心に暗い陰を落とし
後悔と無念とが交差する

うつ向いたふたりの過去は
まるで水彩画のようにぼやけて
水溜まりに浮かんでるよ
あんなに輝いていた未来も哀しみと共に消え去り
過酷な今が僕らの胸に痛みとして残る

あぁ、愛しの可愛い恋人
どうか僕を責めないで
夢の傷痕(あと)はふたりだけの深く悩ましい絆

たったひとつの形見として僕の胸にしまっておくから
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