黄泉の翼/栗栖真理亜
 


風の赴くままに力いっぱい翼を羽ばたかせ
魂の鼓動を感じつつ
あなたの懐へと飛び込みたい
黒くくすんだジャケットもネクタイも
何もかも脱ぎ捨てたあなたの体温を
心密かに感じていたいのです

涙で濡れた冷たい頬をそっと撫で
哀しみに震える紫色の唇に私の唇を重ねて
柔かな時の歪みまでふたりで戻りましょう
苦痛のない優しい光が
私達を幸せな窓辺へと
きっと迎え入れてくれるから

人生の迷いも漠然とした不安も
翼を一振りするだけで
どこか遠くへ吹き飛んでしまう

そう、私は黄泉の不死鳥となって
いつまでもあなたを慰めていたいのです
姿形は見えなくとも
あなたを取り巻く影となって
あなたを見守っていたい
だから・・・

あなたが許す限り
私は光のプリズムに身を焦がしながら
あなたの行く末を見届けましょう
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