憂いの果実/栗栖真理亜
 
包むような優しい眼差しで私を見守ってくれた貴方
貴方のその温かな手にいつまでもすがりつきたかった
だけど、残酷な時刻(とき)の女神がふたりを引き離し
やがて、ココロまでバラバラにしてしまった

私の大切なヒト
どうして私はあの時貴方に本当の気持ちを伝えなかったのだろう
貴方は私の口から発せられる一言ひとことに
耳を傾けて待っていてくれていたのに

切ない涙が熱い軌跡を描いて溢れ堕ちる
ぐちゃぐちゃに崩れたパズルの欠片(ピース)を拾い集めても
もう何もかも元には戻らない

解っている
そんな簡単な事でさえ頭では理解していても
ココロは言うことを訊かないよ

貴方は今ではピンク色した甘い果実に
夢中になって追いかけているけれど
本心はどこか虚無を抱えている
ふたりの淡い恋が最終章を迎えない限り
憂う紅の絆は途切れることはない

みんな私のせいだって分かってる
だから,もうすべて終りにしよう
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