亀の背に乗って帰る。/田中宏輔
 
レモン・ティーに、何が起こったのか。
もちろん、何も起こらなかった。
起こるはずもない。
それが習慣というものだ。
あなたは、こぶしを振り上げたことがあるか?
ぼくは、一度だって、こぶしを振り上げたことがない。
こぶしを振り上げたことのない人間に、
殴り合う権利などない。
海と、海の絵は、同じものだ。
祝福せよ!
こころから祝福せよ!
真ん中に砂を置いて、
ハンカチを踏むと、海になる。
地雷を踏んだ戦車がうずくまる。
動かなくなった
キャタピラの傍らに、
 ――はぐれた波ひとつ。
そして、わたくしは? わたくしは
、、干からびて死んで行く
ウミガメの子が見た
、夢だった。



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