狂人のための鎮魂歌/栗栖真理亜
 
歪な恋が終焉を迎え
誰かの瞳からは血で濁った水滴が溢れ堕ちる

あぁ、白い月が微笑みながら沈黙しているよ
哀れな男は両手を広げ天を仰いで
叶わぬ幻想(ゆめ)の切れ端を追いかけている

暗い、暗い、夜の闇が彼を覆い尽くし
彼のため息すら呑み込んでしまいそうだけど
痺(しび)れた精神(こころ)は
まるで不感症のように彼の身体を侵してゆく

救いのない、この惑星(ほし)で
狂人(きちがい)のように叫んだって
誰も手を差し延べてなんかくれないのさ
ただ腐りきった汚水(どろみず)を飲み干し
黄色い眼で過ぎ去った栄光を仰ぎ見るだけ

そうだ、純真無垢な道化師のように
全てを笑い飛ばしてしまおう
我が身の不幸すら笑い話にして

何もかも知らない振りして
白痴のように埃まみれの道端で躍り狂おう
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