衣 装 ?/塔野夏子
とうに終わったエピローグと
いまだ始まらないプロローグの
狭間に佇む
記憶はずっと仮縫いのまま
予感もずっと仮縫いのまま
だから
来たるべき時のための衣装も
ずっと仮縫いのまま
その衣装は
夜明けの霧のような色
繊細な刺繍やレースやビーズに飾られ
部屋に影が差しても
そこだけ浮かぶようだ
けれど知らない
来たるべき時とは何なのか
その時に その衣装に
はたして私は相応しいのか
知らないまま
時に夢に見る
私の身体が流体となって
その衣装へと流れ込むのを
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