さくら 咲く RUN/阿ト理恵
春はあげもの♪︎と云いながら鯵フライと千切りキャベツを益子焼のお皿に盛り付けしているきみのギャグに突っ込まないでいたら、こうゆう時に、やうやう白くなりゆく、って枕草子をそらんじてほしいのに…、と口を尖らせてぼくに早口で逆つっこみするきみ。ぼくは、どう突っ込んでいいかわからなかったんだけど。まあ、春だから。猫がガラス越しに鳥とおしゃべりしていた。あまりにかわいい猫の声に、きみは、ねぇなんてしゃべってるの教えてミーちゃん教えてよぉミーちゃん、と猫にしつこく話しかけている。まあ、春だから。洗濯機で洗ってしまって縮んだぼくのセーターをラッキーと着てしまうきみ。まあ、春だから。信号が青だよ、と
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