『まっちゃんはアスペ』/松岡宮
 
それはわかい、あまりに若かったころ
「まっちゃんはアスペ、アスペ」
よく友人がそう言って笑った

それは20年とか30年とか前のこと
アスペ、アスペって言葉が舞っていた、雪のように
それはあまりに遠くにあって口に出すのがかんたんだった
精神保健の研究室では研究対象となる当事者がそこにいない想定だった

雪は大地を白で染め、すぐに溶けていった
冬と春のあいだには境界線があった

それはきょう、きょうのはなしだ
たくさんの仲間にであい
いくつかのさようならがあって
東急沿線に東武や西武のエキスが注ぎ込まれ
性別欄の「その他」は拡大し
古い教科書はもう使いものにならな
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