メモ/はるな
友人のうちの前に咲いてる沈丁花を嗅いだ。これは終わりの方の春だね。
そしてそのうちのなかには猫が一匹いて(黒い猫だった)、あくびしたり、のびたり縮んだりして可愛かった。
お酒をあけて、ケーキと、えだまめと、まぐろを食べた。家のことと、おたがいの恋人のことと、そんな話をした。通っている美容院の話とか、もうすぐ友人がする引っ越しの話とか。猫はろいちゃん(黒いから)という名前で、ときどき友人にすり寄っては撫でてもらっていた。
ろいちゃん何歳なんだろう、とわたしが聞くと、わかんないんだよね、地域猫だったのを、みんなにお願いして連れてきたから。それに猫エイズだから早く死んじゃうんだ。と言ってた。
早く死んじゃうんだね、と思いながら友人の猫を撫でるとき、友人はにこにこ笑ってて、わたしは心から安らいでいる。
どの地平が実際のものなのかわからなくなる。大事なものはみんな箱のなかにある。いつでも入っていける箱だ。その箱の中にも箱はあって、箱の中の箱の中にも箱がある。いつでも入っていけるし、出て行ける。でもどこにいるのかをきちんと覚えているかどうかは、また別の問題だ。
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