どうせすべては塵になるから/ホロウ・シカエルボク
 

人生の中でもしも、人が人でなくなる瞬間があるとすれば、俺が腰を下ろすのはそこに決まっている、型枠を取っ払った場所、余計な思考、余計な動作をまったく必要としない場所―人間という生命体にもしも正解なんてものがあるとしたら、その場所を自らの意志で求めることだと俺は思う、冷え切ったキッチンでインスタントコーヒーを入れるための湯を沸かしながら蠅のように周辺をうろつく思考の断片をキャッチして遊んでいた、形を成す前に飲み込まなければならない、大体の輪郭だけとらえておけばあとは精神と肉体が理解を進めてくれる、なんでもかんでも言葉で完璧に表そうとするのは、人間というアイデンティティで身動きが取れなくなったやつが
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