Lark's Tongues in Aspic。/田中宏輔
 



 〓


塾でアルバイトをしていたときのこと。  いったいなにを考えているんだろう?
田中先生はベテランですからって言われて (ヘッセ『知と愛』第十三章、高橋健二訳)
中学二年生の男の子をまかせられた。   目を大きく見開いて、ぼくの顔をじっと見ていた。
小学一年か二年の学力しかない子だった。 (ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)
で、あるとき、その子が         これはなにかしらとても悲しいことだった。
消しゴムをグリグリ机に圧しつけてたので (エリカ・ジョング『飛ぶのが怖い』6、柳瀬尚紀訳)
「そんなにグリグリ圧しつけたら     目から涙がこぼれた。

[次のページ]
戻る   Point(13)