女とナイフと三日月と/ひだかたけし
 
女の三日月の夢を観た
上弦か下弦かは解らない
ただただ黄白く研ぎ澄まされ
鋭利なナイフと共に並べられ
濃い茶の色に貼り付いて居た

眼鏡掛けた色白の
見覚えの在る、
けれども年齢不詳の
可愛いらしい女が
向こうから近付いて来て
ご飯作るね 、と一言云った

僕は炬燵に入りながら
きまじめな顔を、していた

すっとぼけて陰気な
きまじめな顔をして
只々黄白く研ぎ澄まされ
鋭利なナイフで切り裂けば
瞬間が裂開し時は空と化し
意識のすぅうと伸び広がり
純白の輝きのさらなる向こう
浄福に包まれた軽やかな笑い
濃い茶の空に時を貼り付け
朔望が一巡するのを
最早待つ間もなく
眼前に差し出される茶碗の
ゆらゆら湯気立ち上がるのを

透いた眼差しで眺める向こうの私 、

垣間見ては戻り来る
僕は女と飯喰いながら
女の三日月を伴侶にし、
きまじめな顔いつまでも
死地への旅支度を続けて居る




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