息子の肩を揉む/花形新次
 
わたしの三十歳になる
自閉症の息子は
通っている作業所で
仲間のリクエストに応え
曲をYoutubeで再生して
みんなに喜ばれているそうだ
小さい頃から
誰が教えた訳でもないのに
ただわたしの振る舞いを見て
出来るようになった
そんな息子は家でも
買い与えたPCでYouTubeを見ている
わたしは息子の後ろ姿を見て
わたしよりも大きくなった
背中を見て
ただ肩を揉んでやりたくなった
息子はそれに反応するでもなく
ビートルズのNow and thenを聴いている
それでも息子の肩を揉み続けた
決して息子に肩を揉んでもらうことがなくても
それはそれで良いじゃないか
と思いつつ


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