会議室会議/たもつ
茶柱が立った、と言う
その声が
柔らかな水分のようで
会議室の会議の最中にも
誰かの幸せが
どこかにはあった
特急列車が通過する時の
数え切れない風圧
議長さんが小さく
手を振るのが見えた
メモをとりながら
もう二度と会えない
そう思う人の名を
半罫紙にできるだけ
書いていく
名前の思い出せない人が
幾人かいて
何かの記号に
置き換えていくと
どれもこれも似てきてしまって
わたしとの区別が
つかなくなった
透明に揺れながら
議長さんは会議をしていく
ゆっくりと紙の音
開いた窓から
近所の海が入ってくる
皆、溺れないように
机にしがみついたまま
呼吸をしている
もういらないよね、と
親戚に貰われていった
浮輪の澄んだ輪郭を
わたしは描き足した
子供たちの声が
外から聞こえて
誰もが春の訪れを思った時
会議はつつがなく終わった
議長さんはその任を解かれ
やはりわたしは
ひとり溺れた
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