終りのない旅/岡部淳太郎
夢を見ていた
俺は行先のわからぬ列車に乗っていた
人々は無言で座席に座っていたが
どうも様子がおかしい
彼等乗客たちはみな
左脚か右脚のどちらかが欠けているのだ
同時に 左腕か右腕のどちらかも欠けていた
彼等はその状態のまま座席にいた
ふと この列車の行先は
どこでもないのだと思えた
いま ここ という行先に向かって
夜を疾走する列車のなかに
人々はいたのだ
その旅に終りはなかった
永遠という時とともに列車は走り
人々はそれに身を任せるしかないのだった
混沌のような怪しげな囁きが聞こえたかと思ったら
列車の運転手が大きな柄杓のようなもので
ぐつぐつと煮える釜を掻
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