観覧車/岡部淳太郎
 
ただ広いだけの野に
一つの観覧車が淋しく建っている
観覧車は時とともにゆっくりと回り
様々な風景を人に見せる
観覧車に乗り慣れた人は
見慣れた風景をまた見ることになるが
そうでない人にとっては
どれも新鮮な眺めである

人は観覧車に乗るが
自らが見た風景の意味を知るのはずっと後になってからで
大抵は観覧車がその風景の前を通り過ぎてからになる
そのようにして時は過ぎて繰り返され
人はそのなかに ただ身を委ねることしか出来ない
観覧車に乗っている限りは
人にはその時々の景色を眺めては
観覧車がゆっくりと回るのに身を任せるしかないのだ

そうしているうちに 時はいくつもの夜と日を繰り返す
運命のように輝く星に人は憧れては
自らの生のことを思う
虚しくも 愛しかったような
過ぎ去った日々のことを思っては
郷愁のような淋しさを感じる
そして約束を果たすかのように
観覧車は人を乗せたまま元の場所に戻ってくる



(2025年1月)

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