塩水/はるな
もういちど言ってください
とあなたたちが言う
わたしは爪を剥きながら
それはできない と思う
思いながら それさえも言えないでいる
もういちど言ってください
とあなたたちが言う
それはもう聞いた とわたしは思う
晴れて、乾燥した午後だ
靴がないので裸足で出かける
物語には足りないという理由だけで
いくつも詩をつくった
もういちど言ってください
とあなたたちは言う
空のグラスに塩水が注がれる
言うことができない
とわたしは思う
なにも言うことができない
寄せる波を思いながら
わたしの体は溜め池のように滞って
なにも言うことができない
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