NWSF怪畸幻想譚 斬魔屋カンテラ!!『獸醫師・押越亨とドクトル・キメラ』全/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
〈春寒し瞬間を生き息を吐く 涙次〉


【?】

 押越亨オシゴエ・トホル。獸醫師である。一應、テオの主治醫、と云ふ事になつてゐる彼は、大?屋の「角打ち會」にも、たまに顔を出す。
 彼には悲願があつた。だうしても、テオ天才の秘密(何せIQ200である)に迫りたい。それで、月イチの面談日を、テオとの間に設けてゐる。
「テオくん、コンチハ。だうですか、體調。書き物の方で、根を詰め過ぎたりは、してゐないですか?」まづそんなふうに、さりげなく切り出す。時節の挨拶のやうな物- 結局、一向に、テオ天才の「核心」には到達し得ないのであつた。或ひはテオは、そんな彼の野心を見拔いてゐたやも知れぬ。何
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