NWSFピカレスク・ロマン(スピンオフ小咄)『もぐら國王』?/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
とんずら。トンネルを、來た道とは違ふコースで、掘つてゆく。警察官たちの、またしてやられた、とあんぐり口を開けた様が、目に浮かぶやうだ。


【?】

 随分遠回りして、「もぐら御殿」に帰り着いた。朱那はまだ帰らぬ時刻。夜通し働いてゐる彼女は、哀れなのだらうか。好きでやつてゐる事だ。
「只今」間が拔けてゐやうが、俺はそれを云ふ。本日は、よくやりました、自分、ご苦勞さんです。
「ふはゝ、杉下、御用だ!」いかん、警察の放つた密偵だ! 一瞬血が凍る。
 だが密偵は次の言葉もなく、どう、と倒れた。「よお國王、お邪魔してゐるよ」
「こ、此井先生!」此井功二郎、不思議な體術を使ふ、カンテラさん
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