機械/葉leaf
 
時間は円をめぐる歩行者のようで、はてのない夢境にて死を装い続ける。驟雨にぬれた林の小道で、あざやかな多面体をステッキで描く。数々の速度がきざまれた都市の舗石の上で、マッチの火をともす。視界をおおい始める煙雪に足をとめて、黄道へとのぼってゆく。彼の親指の空洞には夕暮れの空がひろがっていて、ガラスでできた小部屋で少年が恋文を書いている。時間には足音がない。

ひとつの機械が彼の手のなかに目覚めている。そこから世界のあらゆる突端へとのびるナトリウム繊維。南へと移動する硬質な空に、幾条ものみぞを彫りこむ。機械は求めているのだ、孤児のように。だがしずかに外部となった石英刃は、瞬間にひらめいて絃を截断する
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