暈して/黒ヱ
思い出に浸して 濡らした糸の切れ端
残したアルバムは鍵しかなくて とても近く
見えるグラデーションの 滲みは切ないね
無味香る さらった風に 遊ぶ糸の色は赤に見える
通り抜ける点に いつでも目配せは走る
水面に映える 寒さにも日は負けなくて
どうしても それは貴方に見えるでしょう
ひとつ以外 すべてを暈しては
いつでもそばに立っていた 緑の桜の木
幾度舞飛ばしても 木の葉はなくならないのね
夜に金魚が ふと息を止めた
今思うのは 貴方の目を見つめ返せはしないということ
後悔の中から 決して探せはしない
貴方たちの 優しさという柔らに気づけなかった日々は
その日暮らしのドレスを着て 踊り続けた日々
暈して
繋がりを 解くように
ただ暈しても
決して 貴方を探しに行くことはない
暈して
ひとつも わからぬように
また暈しても
決して 貴方を探しに行くことはない
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