雨と夜/由比良 倖
っている
ベース音には骨が折れる音
心拍音の相貌はいつも平坦
で、そこにあるべき生命としてのディテールを常に失っている
*
僕は20歳
20歳というゴミ
ぼんやりと年老いて
いく音を書き付けて
いくと
こころを喪失した冬
の叫びがきこえる
*
幸せでいようとして、
そしたら急に泣き出したくなるんだ。
一人ぼっちになって、
ワインを飲んで
世界がむらさき色になり始めたら
前庭のブランコに跨って、
そしてそのまま死んじゃいたいなって……。
*
雨は夜をあからさまにする
夜は雨を精細に分析する
雨は夜を硬直させ、
夜は雨をあからさまにする……
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