異端者の鞄/ただのみきや
 
舌から舌へ
鈴はころがった
光は溶けた
音は影のよう黙っていた
あなたは三度 
わたしは二度
相槌みたいにまばたきして

天蓋がはぎ取られると
屈葬にされた白骨が二体
愛は愛ということばで言い逃れはしない
静電気と糸くず
マジカルなロジック
月は泥に寝そべって
蓮に抱かれ正気を失くしてゆく

泣くでもなく笑うでもなく
ただ鳴いて 風は
地吹雪を踊らせる
凝視する おだやかに 
一枚ずつ
いのちの花弁を脱ぎながら

瞳から瞳へ
賽子はころがった
余白が雄弁すぎて
記号の輪郭は侵食されていった
わたしは三度
あはたは一度
踏み絵の前で自分を堕胎した

迷い込んだ鞄の中で
記憶はアンモナイト
化石のまま生き永らえ
ことばになれなかった
無数のあぶくにつつまれている
流星群みたいに錠剤が降った
願い事には顔がなかった

支払う正気ももう底を突く



                   (2025年2月1日)







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