待合室/栗栖真理亜
 
監視され指摘されて
脅されることが日常茶飯事となった

それでも女手一つで育ててくれた高齢の母を支え
家計を助けるために耐えて耐えて耐え抜いてきた
しかしいくら頑丈な金属でも長年風雨にさらされボロボロに風化してゆくように
精神は限界を迎えて不眠という形で表れ
否応なしに長期休職せざる終えなくなった

そしていま精神科の待合室で順番待ちをしている

湧き出る汗がやっとすぅっとひいてきたようだ
「栗栖さん、どうぞ」
涼やかな看護師さんの声に思わず「はいっ」と反射的に立ち上がり
社員申告書の入ったバッグを慌てて抱え
私は真っ直ぐ白い診察室のドアまで歩いて行った
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