翡翠/栗栖真理亜
 
バスから降りた途端
ざあーと襲いかかるように雨粒が落ちてきた
薄緑に茶色のフリルのような模様の傘を急いで差して
目の前の喫茶店へと一直線に走った
大きなガラス張りの洒落た白い喫茶店の
ギシギシ軋む木製の扉を引いてみると
柔らかで落ち着いた間接照明の中で
居心地の良さそうなソファが並んでいた
どれも緑を基調として花と葉が金で刺繍されたものだ

「お好きな席へどうぞ」
店員さんの声に誘われて私は窓側の席に座る
どれを頼もうかメニュー表と睨めっこしながらしばし悩んだが
5時を少し回った頃にも関わらず腹の虫がグゥーと鳴った
店員さんを呼んでチーズハンバーグ定食とホットコーヒーを
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