de verbo ad verbum / nihil interit。 ──大 岡 信論/田中宏輔
 
たびもだしぬけに登場する、そうした登場の歴史を考察すべきである。」(『邪念その他』O、清水徹訳)と。
 
 プラトンの言葉に、「人がふさわしい魂を相手に得て、その中に言葉を知とともに蒔いて植えつけるとき、その言葉のもつ種子からは、また新たな言葉が別の新たな心の内に生まれて、つねにそのいのちを不死に保つことができる」(『パイドロス』藤沢令夫訳)とありますが、ふと、ぼくは、ポオやボードレールの美しい顔を、マラルメやヴァレリーの美しい顔を、脳裡に思い浮かべました。「種をまく文章があれば、収穫する文章もある。」(『反哲学的断章』丘沢静也訳)と、ヴィトゲンシュタインが書いておりますが、先生の詩によって、ぼくには、まことに実り豊かな収穫がもたらされました。



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