de verbo ad verbum / nihil interit。 ──大 岡 信論/田中宏輔
かし、そのようなことが起こるのは、すぐれた詩の中でのみのことで、凡庸な詩の中では、けっして言葉は生まれ変わりません。生きている感じすらしないでしょう。プルーストが、「文体に一種の永遠性を与えるのは、暗喩のみであろうと私は考えている。」(「フローベールの「文体」について」鈴木道彦訳)と書いておりますが、これは、ある言葉が生まれ変わって新しい概念を獲得するときには、その言葉が書きつけられた作品自体が、それまでに書かれたあらゆる作品とは違ったものになる、という意味でしょう。そして、そういった作品は、プルーストも書いておりますが、読み手の「ヴィジョンを一新した」ことになるのです。読み手の感性を変えることに
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