或る貧困労働者の祈り/栗栖真理亜
 
頃は真っ白なシャツにパリッとした真新しい背広姿
青空の映るガラス張りのビルの中で
責任に似合うそれなりの権限を上司から与えられて
せわしなく働いていただろう
たとえ身体が疲れ切って棒のようになったとしても
温かな家庭の光と匂いが立ち込めるなか
女房・子供の優しい笑顔がオレを迎えてくれただろう

それなのにオレはたった今幾ばくか手渡されたばかりの給料を握り締め
ネットカフェの中に設えられた窮屈な寝城で痛む背中を丸めながら
決して明ける事のない侘しい夜を過ごしている

そんなオレを見て世間は白い眼付きをして嘲笑うだろう
お前が今まで何の努力もして来なかったからだと

しか
[次のページ]
戻る   Point(3)